試験・計測機器の性能を正しく理解することが重要

機器に対する誤った思い込みは校正サイクルにおける予期せぬトラブルの原因になります

試験・計測機器は、多くの生産・開発工程において重要な役割を果たしています。そうした機器は、さまざまな工程の有効性に関する判断や、製品の品質保証を目的として使用されています。そのため当然のことながら、試験・計測機器の定期的な校正は、多くの主要な品質基準の準拠要件とされており、組織内部門、認定団体、米国食品医薬品局(FDA)などの規制団体の違いを問わず、監査機関に共通する審査項目となっています。また、多くの品質システムでは、校正中に機器が仕様を満たしていないことが判明した場合に取るべき対応が規定されています。必ずしも十分に認識されていないようですが、大切なのは、工程に影響を及ぼす許容範囲外の事態によるリスクを抑えられる試験機器を選択することです。

機器を選ぶ際には、考慮しなければならないバランスがあります。コストは常にその重要な要素ですが、もう1つ忘れてはならない必須条件が、工程に対する機器の適切さです。選択した機器は、納入当日だけでなく校正日の中間期間も一貫して、工程の計測要件を満たすものでなければなりません。

あらゆる計測機器は、時間の経過とともにドリフトが発生しやすくなっています。これは、工程において、使用中の機器が仕様範囲外となる可能性が常にある程度存在することを意味します。そのようなリスクを低減するため、メーカーの仕様や、工程の要件、機器の経過年数、許容できるリスクの条件などに基づいて、校正間隔が定められています。

工程に対する機器の適性を判断する際に最も重視されるのは、多くの場合、メーカーの定めた仕様です。しかし、機器の性能を正確に把握するには、仕様のあらゆる項目を確認しなければならないため、長期的な性能を正確に予測することが困難な場合もあります。機器の精度をチェックするだけでは十分とは言えません。精度は、機器の長期的な(または1年間の)ドリフトを考慮に入れていない場合や、限定された使用環境にのみ適用可能な場合が多いからです。機器の性能を正しく理解していないと、次回の校正までに予期せぬトラブルを引き起こす原因となります。

機器の中には、タイプや用途を定めやすいものと、そうでないものとがあります。例えば、試験環境で使用される高精度のデジタルマルチメーターなどは比較的はっきりしていて、多くのメーカーは、24時間、1週間、1カ月、1年間の精度を明示し、指示値への温度の影響についても一定の目安を設けています。こうしたタイプの機器の挙動は十分に理解されており、計測分野においては比較的予想しやすい範疇に含まれます。一方、それと対照的なのが、相対湿度計などの機器です。これらの機器は広範囲にわたるさまざまな条件下や環境下で使用されるため、メーカーにとってそれぞれの用途にふさわしい機器を特定することは容易ではありません。環境が異なれば、それによってセンサにも異なる影響が現れます。

仕様を確認する際には、記載された精度にすべての要素が含まれているかどうかを忘れずにチェックしてください。記載された精度は、特定の温度範囲でのみ有効であることが多く、校正の不確かさや、長期のドリフトが含まれていない場合があります。精度仕様に何が含まれ何が含まれていないかをよく確かめることが重要です。もしも精度に長期ドリフトについての明確な記載がない場合は、それが考慮されていない可能性が高いため、別途検討が必要になります。

エンドユーザーは、工程の要件に注意し、基準器によってどのようなサポートが可能かを理解しておく必要があります。機器を採用する前に、機器に関するあらゆる情報を収集しておくことが非常に大切です。よく知らなければ、初期段階に要するそうした手間よりも、はるかに大きなコストの負担を招くことになるからです。

執筆者について

マイケル・ボエツキス(Michael Boetzkes)
ヴァイサラ カナダ(Vaisala Canada Inc.)ライフサイエンス&ハイテクノロジー部門ライフサイエンス製品品質責任者。専門は物理学。1998年Veriteq社に入社。校正試験室責任者、生産部門責任者を経て、品質部門バイスプレジデントに就任し、ライフサイエンス分野や規制関連の顧客ニーズを満たすための品質システムを開発(Veriteq社はその後2010年にヴァイサラが買収)。現在は、校正・品質システムに関する知識をさらに深め、相対湿度への対応に取り組んでいる。
連絡先:michael.boetzkes@vaisala.com

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